『男はつらいよ』をもっと深く知り、寅さん博士を目指せ!
2台並んだタッチパネルでは、「寅さんクイズ」「寅さんとマドンナたち」「男はつらいよ名場面」が楽しめます。「寅さんクイズ」は初級・中級・上級の3コースをご用意。それぞれ全5問の三択クイズが出題されます。正答はもちろんのこと、誤答にも解説がついていますので、何度も繰り返し挑戦してみましょう。
「寅さんとマドンナたち」では、48作品に登場した寅さんと満男のマドンナが紹介されています。出演した作品の情報のほか、登場場面の映像も観ることができます。
「男はつらいよ名場面」ではシリーズをさらに深掘りできる様々な切り口から映像で解説。豪華なゲストスターが並ぶ「寅さんと名優たち」、旅先からくるまやに帰郷した時の珍妙な「寅さんの帰宅パターン」、映画の世界がそのまま町のいたるところに残っていることがよくわかる「寅さんと葛飾柴又」、大人も子供も思わず笑顔になる「寅さんのギャグ」と盛りだくさん。気がついたら、このタッチパネルコーナーで時間を忘れて熱中していた…というお客様も。
「おかえりTORAJIRO」
寅次郎 宇宙の旅路
彗星は別名ほうき星とも呼ばれ、太陽系のはるか遠くから周期的に飛んでくる天体です。彗星は氷と塵(微粒子)でできており,太陽系が始まった約46億年前に太陽から遠く離れた低温のすべてが凍てつく場所で形成されました.実は太陽系はどのようにして出来上がったのか、その始まりがはっきりと解明しておらず、太陽系で最初にできた天体である彗星や小惑星に手がかりがあるのでは、と推測されていました。
NASA(米航空宇宙局)による「スターダスト計画」は81P/ビルト2彗星に接近し、その彗星から放出され,彗星のしっぽにある塵を持ち帰ることを目指し、1999年2月7日にロケットが打ち上げられました。そして2004年1月2日に彗星の塵の捕獲に成功、2006年1月15日に採取した塵が入っているカプセルが地球に帰還しました。
NASAに持ち帰られた試料は九州大学准教授(当時)の中村智樹さんらによる研究チームのもと、解析が進められました。一筋縄ではいかない研究に何度も行き詰まるたびに、中村さんは『男はつらいよ』シリーズを繰り返し鑑賞し、閉塞感に風穴を開け、気持ちを新たにして研究に臨むことができたといいます。『男はつらいよ』の大ファンになった中村さんは,NASAに彗星の塵に『男はつらいよ』の登場人物の名前を付ける許可を取りました。
そして、ついに「TORAJIRO(寅次郎)」と名付けた塵が、太陽近くで1500℃程度の超高温まで加熱されていたこと突き止めたのです。太陽からはるか遠くで生まれた彗星に、太陽の近くで高温に加熱され溶けた粒子が含まれているという事実は、約46億年前に太陽系が誕生した際に、物質を外側へ大きく動かす正体不明の力があった証拠となり、太陽系の始まりの謎を解く鍵となるのです。この研究成果を基にした論文は、2008年9月19日付の米科学誌Scienceに掲載されました。
こうして「TORAJIRO」は太陽近くで誕生し,太陽~地球間の30~40倍の距離にある彼方に移動し,他の粒子といっしょになり小さな天体になりました.そして,46億年後,彗星は太陽近くにやってきて,彗星から飛び出した「TORAJIRO」は探査機により捕獲され,長い旅の果てに地球にやってきました.つまり, 「TORAJIRO」は広大な太陽系を46億年かけて1周して来たのです.まさに「TORAJIRO 宇宙の旅路」です。
今回、NASAおよび中村さんらの多大なるご協力のもと、この葛飾柴又寅さん記念館で特別に展示されることになりました。彗星の一部が実際に一般展示されるのは、世界でも稀な例となります。
寅さんは第36作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』の冒頭の夢の場面で、NASAのロケットに乗せられて打ち上げられました。寅さんとTORAJIROが宇宙空間で出会って、この柴又に帰ってくるところを想像すると楽しくなってきますね。