葛飾探訪風土記(4月号)

book_watoji.png   かつしか文学散歩  nigaoe_moriougai.png



 葛飾区は、映画『男はつらいよ』や漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』によって、全国的にその名を知られるようになりました。その影響もあってテレビや雑誌などでは、東京の下町として紹介されることが多くなっています。
 しかし、興味深いことに近・現代の文学作品を読んでみると、葛飾区は現代的な東京の下町のイメージではなかった景観が読み取れます。時期的に整理すると、映画は昭和40年代、漫画は昭和50年代からであり、それらの作品が人気を博するのはいわゆる高度経済成長期以降のことです。それに対して葛飾区が登場する文学作品の多くは、高度経済成長期以前のものが知られています。中でも、葛飾区が文学的な作品の舞台として多く登場するのは「柴又」地域や「堀切」地域となっています。
 例えば、田山花袋が著した『東京の近郊』(大正5年初版)では、「川の東郊」の項で葛飾区が登場します。花袋は、葛飾の畑の見事さに感心し、畑には肥が行き届いているので、ネギ・サヤマメ・ダイコン・コマツナ・インゲン・ショウガ・コカブなどの野菜がよくできているが、その分肥溜めも多いので「その臭いこともおびただしい」とももらしています。また、柴又帝釈天は田圃の中にあり、「門前に人家が五・六軒並んでいるばかりで、四面は広々とした野原である」と映画などで撮影・描写される以前の柴又帝釈天周辺の風景が描写されています。



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 『東京近郊 一日の行楽』(大正12年)では、「柴又の帝釈天」「小利根川の桜花」「堀切の菖蒲園」の項で、「柴又」や「堀切」が紹介されています。「堀切の菖蒲園」では、花の季節になると「田園には稲が青く、小さな川には薄(水草)が浮いて、水馬などが日に動いている。大きな麦わら帽子をかぶって釣り糸を垂れている人などもある」と堀切周辺ののどかな風景が記されています。
 この花袋の二つの作品からは、明治後半から大正期における柴又や堀切の風景とともに、水郷葛飾の景観的な特徴も窺えます。明治・大正・昭和にわたり、文豪が筆で描いたいにしえの葛飾の風景に思いを馳せながら、今の葛飾を散策するのもなかなか楽しいものです。
          

   芝木好子文学碑(小元公園近傍)



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 区観光課では、文学作品に登場する葛飾区のことを紹介したパンフレット『かつしか文学散歩』を制作しました。中川・新中川を境に、東部と西部の2種類あります。
 この『かつしか文学散歩』を手元において現在の葛飾を歩くと、東京の東部、隅田川以東の開発の様子や地域の変遷などを知ることができます。また、失われたり、変わったりした風景だけなく、いにしえから変わらない、文豪が愛でた風景や情緒が葛飾の至るところに残っていることが確認できるはずです。

※『かつしか文学散歩』のお供に、地域の見どころ満載の『葛飾観光ガイドマップ』とかつまるガイド(https://www.katsushika-kanko.com/)を見ていただくと、より一層葛飾のまち歩きを楽しむことができます。


                               尾崎士郎文学碑(帝釈天題経寺境内)

『かつしか文学散歩』『葛飾観光ガイドマップ』についての問合せ先
葛飾区役所 観光課(TEL:03-3838-5558)

                                     

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